あと、11分
どうして、こんなに不安になるんだろう。
今ここにあるのが、事実で、真実で、彼女が消えてしまうだなんて、そんな空想に振り回されるなんて、どうかしてる。
シキは苦しそうに歪めていた口元を、こっちが見ていて痛々しいほどに無理やり吊り上げて、ぎこちなく笑う。
「うん、……わたし、いって見たい」
「あ、そ、そっか。じゃあ行こう」
「う、ん」
そういいながら、シキが正面を向いたその時。
「───あ」
小さく、小さく声を漏らして呟いた。
途切れ途切れの、今までよりももっとか細い声で。
俺もつられて顔を上げる。