あと、11分






「こら、スイ!レポート提出しに行くくらいでどんだけ時間かかってんよ、ハゲ!」



───夕雨だった。


夕雨はどすどす地鳴りがするんじゃないかってほど、怒りをあらわにした歩き方でこちらにやってくる。

目の前までやってくると、聞こえるほどの大きな舌打ちをして、

「ったく、スイは私を怒られたいのか」

「まさか」

「ん」


夕雨が俺に向かって手を出してくる。

なんだそれは。金の要求か。


「ペンキ」

「……あ」

「は?」


夕雨が顔を顰める。

心を読む力なんてなくても彼女の言っていることは分かった。

アンタは今まで何してたんだこの野郎、だきっと。


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