あと、11分
なぜか、夕雨が怒りをぶちまけたような声じゃなくて、疑問をぶつけるような発音で、言う。
不思議に思ってもう一度視線を戻すと、夕雨は、言った。
「───誰よ、こいつって」
「は?」
「いや、だからこいつって誰。どこにいんのよ」
ぶわっと血の気が引いた気がした。
今までにないくらいに、背筋が凍ったような一気に血を抜き取られてしまったみたいな、立ちくらみ。
「あ、」
「ちょっと、スイ聞いてんの?」
夕雨のことなんて構わないかった。そんな余裕が、なかった。
俺はばっと後ろを振り返る。