あと、11分
あと、9分
***
いたはずなんだ。
確かに、いたはずなんだ。
シキは、絶対に、いたはずなんだ。
俺と話して、俺と笑って、俺と遊ぶって。
いたんだ、絶対に。絶対に。
なのに、どうしてこんなに焦って、不安になる?
「……ちょっと、大丈夫?」
「あ、」
夕雨が俺の顔を覗き込んで、そっと手を伸ばしてくる───ぱしん。
耳元で、音がした。
なんだ、と思って顔を上げると夕雨が、目を見開いて手の甲を押さえながら俺の名前を呼ぶ。
どうしてそんな顔しているのか、最初は分からなかった。