あと、11分


───『きっと、…………傷つける』


そんなの、誰だって。

誰だって誰と関われば、きっといつかは喧嘩だってして、お互いを嫌いになったりするときだって、ある。

たとえ、何度傷つけて傷つけられて、俺がシキに嫌われたって、何度だって言う。


何度だって、彼女に逢いたいって、言う。





……本当に?

本当に、そう?


お前は本当に、シキに何度だって言える?

本当は、シキがいないかもしれないって思いたくないから、シキが消えたかもしれないって、思いたくないから、誤魔化すみたいにうやむやにしたいから、そんな風に思ってるだけじゃないのかよ。

もう会えないかもしれないから、そう思いたいだけなんじゃないのかよ。



ずっと前から逢ってたなんて、記憶なんてない。

シキと話した記憶も、シキと笑った記憶も、なんにもない。

シキのことなんて、なんにも知らない。


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