悪魔と私
うわさばなし
1
「ねえ、聞いた?松永さんの話」
「すごいイケメンだったらしいわよ」
「俺ら相手にされない訳だよな」
「見たかったなー」
「あの人、男嫌いじゃなかったんだな」
ついに噂が回ったか。
仕事が一段落して、給湯室に向かうと、そんな話し声が聞こえて、私はため息をついた。
鉢合わせると面倒だ。
問いただされることはないだろうけど、視線が刺さる。絶対。
私は、コーヒーを諦めデスクに戻る。
もうじき2時だから、社食も空いてくるし、それまで我慢しよう。
私は、さっき終わらせた仕事のファイルを開き、再確認をはじめる。
すると、横から声をかけられた。
「あの、松永さん」
三上君の声だ。
椅子を声の方に少し回転させ、彼を見上げる。
三上君は、財布を片手に微笑んだ。
「一緒にランチ行きませんか?」
「三上君もまだなの?いつもは早いのに」
私は内心、首を傾ける。
三上君は普段、部署内で比較的賑やかなグループに属し、彼らと早々と食堂に行っているイメージだった。
仕事が立て込んでいたのだろうか。
私は席を立って、貴重品だけをいれたハンドバッグを掴む。
調度、そろそろ食堂に行こうと思っていたところだ。
「いいわ。行きましょ」
「え、いいんですか?」
……そっちから誘ったくせに、なんなんだ。
私は、少し眉間に皺をよせる。
それに気づいた三上君は、慌てて釈明した。
「いや、いつ誘っても断られたんで、つい!すみません!」
「そうだった?」
「そうですよ。こんなの初めてです。あ、どこ行きます?希望あれば車出しますよ」
「あれ?外行くの?食堂じゃなくて?私、調度今から行こうと思ってたんだけど」
「……あ、そういうことでしたか」
私の言葉に、なぜか三上君は肩を落とした。
外に食べに行きたかったんだろうか。
我社の社食は、毎日変わる豊富なメニューが評判で、安くて美味しいのに。
生憎、私は食堂以外で外食する気はない。
「私に気にせず外行っておいでよ」
「あ、待ってください!別に外行きたかったわけじゃ!食堂でいいです!一緒に行きましょう!」
独り、食堂へと歩きだした私を、三上君は慌てて追い掛けて来たのだった。
「すごいイケメンだったらしいわよ」
「俺ら相手にされない訳だよな」
「見たかったなー」
「あの人、男嫌いじゃなかったんだな」
ついに噂が回ったか。
仕事が一段落して、給湯室に向かうと、そんな話し声が聞こえて、私はため息をついた。
鉢合わせると面倒だ。
問いただされることはないだろうけど、視線が刺さる。絶対。
私は、コーヒーを諦めデスクに戻る。
もうじき2時だから、社食も空いてくるし、それまで我慢しよう。
私は、さっき終わらせた仕事のファイルを開き、再確認をはじめる。
すると、横から声をかけられた。
「あの、松永さん」
三上君の声だ。
椅子を声の方に少し回転させ、彼を見上げる。
三上君は、財布を片手に微笑んだ。
「一緒にランチ行きませんか?」
「三上君もまだなの?いつもは早いのに」
私は内心、首を傾ける。
三上君は普段、部署内で比較的賑やかなグループに属し、彼らと早々と食堂に行っているイメージだった。
仕事が立て込んでいたのだろうか。
私は席を立って、貴重品だけをいれたハンドバッグを掴む。
調度、そろそろ食堂に行こうと思っていたところだ。
「いいわ。行きましょ」
「え、いいんですか?」
……そっちから誘ったくせに、なんなんだ。
私は、少し眉間に皺をよせる。
それに気づいた三上君は、慌てて釈明した。
「いや、いつ誘っても断られたんで、つい!すみません!」
「そうだった?」
「そうですよ。こんなの初めてです。あ、どこ行きます?希望あれば車出しますよ」
「あれ?外行くの?食堂じゃなくて?私、調度今から行こうと思ってたんだけど」
「……あ、そういうことでしたか」
私の言葉に、なぜか三上君は肩を落とした。
外に食べに行きたかったんだろうか。
我社の社食は、毎日変わる豊富なメニューが評判で、安くて美味しいのに。
生憎、私は食堂以外で外食する気はない。
「私に気にせず外行っておいでよ」
「あ、待ってください!別に外行きたかったわけじゃ!食堂でいいです!一緒に行きましょう!」
独り、食堂へと歩きだした私を、三上君は慌てて追い掛けて来たのだった。