悪魔と私
3
「一昨日の雨の日、迎えに来てたっていう男の人が、その、彼氏だって本当なんですか」
「…………」
来た。
不意打ちだ。
思わず黙ってしまった私に、三上君は「やっぱ、失礼でしたよね。すみません」と頭をさげる。
これは誤解したな。
立ち去ろうとする三上君を放っておいてもいいが、彼の中で噂が確信に変わり、それが広まって噂が大きくなるのは御免だ。
私は彼を引き止め、席に戻るように促す。
三上君は素直に座りなおした。
「そんなに噂になってるの?」
まさか、正直に『あれは、うっかり呼び出しちゃった悪魔なの』なんて言える訳がないので、
私は、まず噂の内容を確かめるべく、三上君に尋ねる。
内容に応じて、適当に説明しようと考えたのだ。
三上君によると、殆どの噂では、私を迎えに来た悪魔は彼氏だと思われているようだった。
しかし、変わった物では、悪魔が"執事"で、私が実はどこかの令嬢なのではないかという、笑ってしまうような噂もあった。
「何人かが、松永さんと男の人を見てるから、迎えが来たっていうのは事実なんでしょうけど。僕、なんかピンと来なくて」
「どうして?」
「だって、松永さんって、商談とか仕事のときは人付き合い良いですけど、プライベートは独りが好きというか、他人を寄せつけないじゃないですか」
「まあ、確かに」
よく分析してるな。
そのとおりだ。
私が相槌を打つと、三上君は少し目を泳がせて話を続けた。
「でも、今日ランチに誘ったら、松永さんは断りませんでしたよね。今までなら、こんなの絶対有り得ませんでした。
……だから僕。あの男が、松永さんの彼氏っていうのは本当かもしれないって思ったんです」
確かに今までなら断っていたはずだ。
三上君の言葉で、悪魔だけでなく、他人に対してもガードが緩くなっていたことを気付かされた私は黙り込む。
しかし物思いにふけってばかりもいられない。
悪魔とは決して付き合っている訳ではないし、三上君の誤解を解かなくては。
「…………」
来た。
不意打ちだ。
思わず黙ってしまった私に、三上君は「やっぱ、失礼でしたよね。すみません」と頭をさげる。
これは誤解したな。
立ち去ろうとする三上君を放っておいてもいいが、彼の中で噂が確信に変わり、それが広まって噂が大きくなるのは御免だ。
私は彼を引き止め、席に戻るように促す。
三上君は素直に座りなおした。
「そんなに噂になってるの?」
まさか、正直に『あれは、うっかり呼び出しちゃった悪魔なの』なんて言える訳がないので、
私は、まず噂の内容を確かめるべく、三上君に尋ねる。
内容に応じて、適当に説明しようと考えたのだ。
三上君によると、殆どの噂では、私を迎えに来た悪魔は彼氏だと思われているようだった。
しかし、変わった物では、悪魔が"執事"で、私が実はどこかの令嬢なのではないかという、笑ってしまうような噂もあった。
「何人かが、松永さんと男の人を見てるから、迎えが来たっていうのは事実なんでしょうけど。僕、なんかピンと来なくて」
「どうして?」
「だって、松永さんって、商談とか仕事のときは人付き合い良いですけど、プライベートは独りが好きというか、他人を寄せつけないじゃないですか」
「まあ、確かに」
よく分析してるな。
そのとおりだ。
私が相槌を打つと、三上君は少し目を泳がせて話を続けた。
「でも、今日ランチに誘ったら、松永さんは断りませんでしたよね。今までなら、こんなの絶対有り得ませんでした。
……だから僕。あの男が、松永さんの彼氏っていうのは本当かもしれないって思ったんです」
確かに今までなら断っていたはずだ。
三上君の言葉で、悪魔だけでなく、他人に対してもガードが緩くなっていたことを気付かされた私は黙り込む。
しかし物思いにふけってばかりもいられない。
悪魔とは決して付き合っている訳ではないし、三上君の誤解を解かなくては。