悪魔と私
2
「なあ!アンタ選んでくれよ」
「嫌。なんで私が」
「だってセンス良いじゃん。服だけはオシャレだ。家も家具もボロボロなのに」
「……服は私が選んでる訳じゃないからね」
「え?」
悪魔がマヌケな声をあげる。そして、少し慌てた様子で、勢いよく問い詰めてきた。
「誰に!?つか、いつ?アンタ仕事関係以外で誰かと会ってんの?」
「ちょっと。五月蝿い」
騒ぐ悪魔に視線が集まり、私は静かに悪魔を睨みつける。
悪魔は察しは良いので、ぐっと唇を噛みしめて、口をつぐんだ。
「あのね、何に興奮してるか知らないけど急に大きい声出さないでよ」
「悪ぃ。でも気になったんだよ。アンタもしかして友達いるの?」
「まさか。いるように見える?」
「だよな。……ってことは彼氏かよ。嘘だろ!」
「だから五月蝿いって」
五月蝿い悪魔に、本日三度目の溜め息を吐く。
どうして折角の休日に、こんなに疲れなければいけないのだ。
悪魔は声のボリュームは抑えたものの、相変わらず慌てた様子で私を問い詰める。
こういうのは苦手だ。鬱陶しい。
「なあ、彼氏なのかよ?」
「いないわよ。そんな鬱陶しいもん」
「じゃあ誰?焦らしてないで教えろよ」
「貴方がずっと喋ってるから答えらんないんでしょ。服を選んでんのはお母さん。どう、満足?」
「オカアサン?」
「そう、母親」
「……アンタ、親いたのかよ。想像できねえ」
「いるわよ普通に。二人とも健在よ」
失礼なヤツだ。
独り好きな私の性格や、日々の態度から、悪魔は、私に親がいないと思っていたらしい。
「両親は普通なのか?」
「普通よ。だから服なんか、送ってくるんじゃない」
「普通なのか?それ。いや、人間の事情なんか知んねえけど」
悪魔は首を傾げるが、私にとっては普通のことだ。
昔からファッションに興味がなく無頓着だった私は、そのことを歎く母に、服やメイクを無理矢理コーディネートされていた。
『せっかく可愛くうんであけたのに』
そんな恩着せがましい台詞が口癖な母は、私が独立した今でも、毎シーズン服や化粧品を送り付けて来る。
化粧品は仕事で使えるものもあるが、服は着る機会がないからいい迷惑だ。
収納に困り、大体はすぐ売ってしまうのが常だった。
「嫌。なんで私が」
「だってセンス良いじゃん。服だけはオシャレだ。家も家具もボロボロなのに」
「……服は私が選んでる訳じゃないからね」
「え?」
悪魔がマヌケな声をあげる。そして、少し慌てた様子で、勢いよく問い詰めてきた。
「誰に!?つか、いつ?アンタ仕事関係以外で誰かと会ってんの?」
「ちょっと。五月蝿い」
騒ぐ悪魔に視線が集まり、私は静かに悪魔を睨みつける。
悪魔は察しは良いので、ぐっと唇を噛みしめて、口をつぐんだ。
「あのね、何に興奮してるか知らないけど急に大きい声出さないでよ」
「悪ぃ。でも気になったんだよ。アンタもしかして友達いるの?」
「まさか。いるように見える?」
「だよな。……ってことは彼氏かよ。嘘だろ!」
「だから五月蝿いって」
五月蝿い悪魔に、本日三度目の溜め息を吐く。
どうして折角の休日に、こんなに疲れなければいけないのだ。
悪魔は声のボリュームは抑えたものの、相変わらず慌てた様子で私を問い詰める。
こういうのは苦手だ。鬱陶しい。
「なあ、彼氏なのかよ?」
「いないわよ。そんな鬱陶しいもん」
「じゃあ誰?焦らしてないで教えろよ」
「貴方がずっと喋ってるから答えらんないんでしょ。服を選んでんのはお母さん。どう、満足?」
「オカアサン?」
「そう、母親」
「……アンタ、親いたのかよ。想像できねえ」
「いるわよ普通に。二人とも健在よ」
失礼なヤツだ。
独り好きな私の性格や、日々の態度から、悪魔は、私に親がいないと思っていたらしい。
「両親は普通なのか?」
「普通よ。だから服なんか、送ってくるんじゃない」
「普通なのか?それ。いや、人間の事情なんか知んねえけど」
悪魔は首を傾げるが、私にとっては普通のことだ。
昔からファッションに興味がなく無頓着だった私は、そのことを歎く母に、服やメイクを無理矢理コーディネートされていた。
『せっかく可愛くうんであけたのに』
そんな恩着せがましい台詞が口癖な母は、私が独立した今でも、毎シーズン服や化粧品を送り付けて来る。
化粧品は仕事で使えるものもあるが、服は着る機会がないからいい迷惑だ。
収納に困り、大体はすぐ売ってしまうのが常だった。