悪魔と私
7
「で、先輩。この人だれ?」
教官との話が一段落し、紅茶を飲んでいた私の前に、いつのまにか戻ってきていた悪魔の後輩が立ちはだかる。
仁王立ちで私の前に立ち、指を指してくる少年に、悪魔は少し悩んだあと「俺の主人」と答えた。
後輩達は口々に感嘆の声をあげる。
「えー!召喚中ってホントだったんスか」
「先輩、噂になってますよー。全然帰って来ないから」
「そんなヤツ殺して帰って来ちゃえばいいのに!」
「ね!魂だけ取っちゃえばいいのよ!」
敵意剥き出しで私を睨みつけてくる悪魔の後輩達。
五月蝿い上に物騒だ。教官にも同じ事を言われたが、静かだからマシだった。
私は失礼な彼らを無視して紅茶をすする。
教官はそんな私を見て苦笑し、悪魔は後輩達を宥めた。
「おい。俺の主人だぜ?あんま悪く言うなよ」
「えー。でも先輩、早く魔界に帰りたいでしょ?その女、一体どんな望みを言ったんスか。先輩が手こずるなんて」
「望みがねえんだ。呼ばれたのは事故だった」
「ひどい。災難ッスね」
「ま、いいんだよ。俺は結構、今の状況が気に入ってんだ」
「えー」
「俺が決めたことだ。オマエらに文句言われる筋合いはねえよ」
悪魔がコツリと後輩の頭を殴る。
後輩達は不服そうな顔をしているが、教官はにこやかだった。
「ほら、君達。先輩を困らせては行けませんよ。それに、そろそろ帰る時間です」
教官が立ち上がり、杖を空気に突き立てる。
すると、大人1人が余裕で通れるくらいの景色が歪んだ穴が現れた。
そこだけ蜃気楼が起きているようだ。
いつの間にか、周りに客はいなくなっており、辺りには薄く霧がかかっている。
「さあ、入りなさい」
教官が生徒達を促す。
後輩達は名残惜しそうに蜃気楼の中へと入っていった。
その中のひとりが振り返る。
「先輩。いつ帰るんスか」
「さあな。百年以内には帰るよ。ほら早く行け。教官が疲れちまうだろ」
悪魔が後輩の背を蹴飛ばし送り出した。
最後に残ったのは教官だ。
私と悪魔に向き合い、にこやかに微笑む。
「ベル君。お遊びも程ほどにな。しばらくそちらに留まる事は、私が伝えておこう」
「ありがとよ」
「お嬢さん。ベル君を頼みますよ。では」
教官が穴へと足を伸ばす。
彼が消えると、辺りには客が戻り霧もすっかり晴れていた。
教官との話が一段落し、紅茶を飲んでいた私の前に、いつのまにか戻ってきていた悪魔の後輩が立ちはだかる。
仁王立ちで私の前に立ち、指を指してくる少年に、悪魔は少し悩んだあと「俺の主人」と答えた。
後輩達は口々に感嘆の声をあげる。
「えー!召喚中ってホントだったんスか」
「先輩、噂になってますよー。全然帰って来ないから」
「そんなヤツ殺して帰って来ちゃえばいいのに!」
「ね!魂だけ取っちゃえばいいのよ!」
敵意剥き出しで私を睨みつけてくる悪魔の後輩達。
五月蝿い上に物騒だ。教官にも同じ事を言われたが、静かだからマシだった。
私は失礼な彼らを無視して紅茶をすする。
教官はそんな私を見て苦笑し、悪魔は後輩達を宥めた。
「おい。俺の主人だぜ?あんま悪く言うなよ」
「えー。でも先輩、早く魔界に帰りたいでしょ?その女、一体どんな望みを言ったんスか。先輩が手こずるなんて」
「望みがねえんだ。呼ばれたのは事故だった」
「ひどい。災難ッスね」
「ま、いいんだよ。俺は結構、今の状況が気に入ってんだ」
「えー」
「俺が決めたことだ。オマエらに文句言われる筋合いはねえよ」
悪魔がコツリと後輩の頭を殴る。
後輩達は不服そうな顔をしているが、教官はにこやかだった。
「ほら、君達。先輩を困らせては行けませんよ。それに、そろそろ帰る時間です」
教官が立ち上がり、杖を空気に突き立てる。
すると、大人1人が余裕で通れるくらいの景色が歪んだ穴が現れた。
そこだけ蜃気楼が起きているようだ。
いつの間にか、周りに客はいなくなっており、辺りには薄く霧がかかっている。
「さあ、入りなさい」
教官が生徒達を促す。
後輩達は名残惜しそうに蜃気楼の中へと入っていった。
その中のひとりが振り返る。
「先輩。いつ帰るんスか」
「さあな。百年以内には帰るよ。ほら早く行け。教官が疲れちまうだろ」
悪魔が後輩の背を蹴飛ばし送り出した。
最後に残ったのは教官だ。
私と悪魔に向き合い、にこやかに微笑む。
「ベル君。お遊びも程ほどにな。しばらくそちらに留まる事は、私が伝えておこう」
「ありがとよ」
「お嬢さん。ベル君を頼みますよ。では」
教官が穴へと足を伸ばす。
彼が消えると、辺りには客が戻り霧もすっかり晴れていた。