悪魔と私
3
「待てよ」
通話ボタンを押そうとしたところで、男に牽制される。
警察に通報されかかっているというのに、特に脅えた様子のない男は、諭すように私に言った。
「警察呼んだら恥かくぞ。俺の姿はアンタにしか見えないからな」
「……警察と一緒に、救急車も呼ぶ?」
「おい、俺は精神異常者でもねえし、薬でラリってる訳でもねえよ」
「じゃあ、時間稼ぎにおかしなフリしてるのね。ふざけないで」
「ふざけてねえよ!なんだよ!アンタが呼び出したくせに」
「私が呼び出した?なにそれ?」
何言ってんだ、この男は。
私は呆れて男を見つめる。
そんな私に、男はゴミ袋を漁り出したかと思うと、つい先程、私が捨てた魔法陣の描かれた紙を取り出した。
「ほら、血!これアンタのだろ?」
男が紙を拡げて見せる。
紙に描かれた円の中心に、目を凝らさなければわからない程少量だが、確かに血がついていた。
さっき指を切ったときについたのだろう。
「この紙、さっきとどこか違わないか?」
「まるめられてシワシワになってて、私の血が少しついてる」
「そういうことじゃねえよ!柄だ、柄!」
私の眼前に、ずいと紙が突き出される。
そういえば、紙の余白が増えたような。
さっき見たときは、もっと字が多くなかったか。
それに。
「……円の中にあった五芒星がない」
「そうだ。つまり、この魔法陣は使用済だ。俺を呼び出してな」
「意味わかんない」
「わかれよ!急に柄が消えてんだぜ!?」
「私の見間違いかも」
「見間違いなんかじゃねえよ!アンタは確かに"悪魔"を呼び出したの!それがオレ!」
畳で殴られて鼻血垂らして、何が悪魔だ。
悪魔なら当然、避けれるのではないのか。いや、悪魔がどんなものかなんて知らないが。
「なんだよ。信じらんねえのかよ」
「当たり前。悪いけど、私、暇じゃないの。警察呼ばれたくなかったら、早く出てってくれる?」
「無理。アンタに呼び出されたからには、俺の主人はアンタなんだ。願いを叶えるまで拘束されちまうんだよ」
「ああ。もう、いいから。そのガキっぽい芝居。そんなの誰も信じないよ?」
「じゃあ俺のことカメラで撮ってみろよ。信じざるをえないぜ」
付き合ってられない。
そう思いながらも、あまりに自信有り気に言う男がつっかかり、私は携帯のカメラ構えたのだった。
通話ボタンを押そうとしたところで、男に牽制される。
警察に通報されかかっているというのに、特に脅えた様子のない男は、諭すように私に言った。
「警察呼んだら恥かくぞ。俺の姿はアンタにしか見えないからな」
「……警察と一緒に、救急車も呼ぶ?」
「おい、俺は精神異常者でもねえし、薬でラリってる訳でもねえよ」
「じゃあ、時間稼ぎにおかしなフリしてるのね。ふざけないで」
「ふざけてねえよ!なんだよ!アンタが呼び出したくせに」
「私が呼び出した?なにそれ?」
何言ってんだ、この男は。
私は呆れて男を見つめる。
そんな私に、男はゴミ袋を漁り出したかと思うと、つい先程、私が捨てた魔法陣の描かれた紙を取り出した。
「ほら、血!これアンタのだろ?」
男が紙を拡げて見せる。
紙に描かれた円の中心に、目を凝らさなければわからない程少量だが、確かに血がついていた。
さっき指を切ったときについたのだろう。
「この紙、さっきとどこか違わないか?」
「まるめられてシワシワになってて、私の血が少しついてる」
「そういうことじゃねえよ!柄だ、柄!」
私の眼前に、ずいと紙が突き出される。
そういえば、紙の余白が増えたような。
さっき見たときは、もっと字が多くなかったか。
それに。
「……円の中にあった五芒星がない」
「そうだ。つまり、この魔法陣は使用済だ。俺を呼び出してな」
「意味わかんない」
「わかれよ!急に柄が消えてんだぜ!?」
「私の見間違いかも」
「見間違いなんかじゃねえよ!アンタは確かに"悪魔"を呼び出したの!それがオレ!」
畳で殴られて鼻血垂らして、何が悪魔だ。
悪魔なら当然、避けれるのではないのか。いや、悪魔がどんなものかなんて知らないが。
「なんだよ。信じらんねえのかよ」
「当たり前。悪いけど、私、暇じゃないの。警察呼ばれたくなかったら、早く出てってくれる?」
「無理。アンタに呼び出されたからには、俺の主人はアンタなんだ。願いを叶えるまで拘束されちまうんだよ」
「ああ。もう、いいから。そのガキっぽい芝居。そんなの誰も信じないよ?」
「じゃあ俺のことカメラで撮ってみろよ。信じざるをえないぜ」
付き合ってられない。
そう思いながらも、あまりに自信有り気に言う男がつっかかり、私は携帯のカメラ構えたのだった。