悪魔と私
5
話を聞くと、難儀な事に、呼び出された悪魔は、行きと同じ道を通らなければ、帰れないらしい。
行きに強い力で作られた道を通って来たらしい男が、その道をもう一度通って帰るには相当な力がいるのだという。
高位な魔法陣なら、なぜ見習いが来るのか。私は、誰に言えば良いのかわからない文句を飲み込む。
そして男に尋ねた。
「貴方が帰るには、私はどれくらいの望みをいえばいいの?」
「最低でも、魂を半分くらい頂くに値する望みがいる」
「半分!?」
「ああ。なんかないか。一世一代の願い」
男が、ほらほらと手を伸ばす。私はその手を払いのけた。
そんな気軽に一世一代の望みが言えるか。
というか、そんな望みはない。
嘘をついて叶えてもらってもいいが、嘘の望みの為に魂を半分も取られるのは御免だ。
男によると、魂を半分とられたくらいじゃ死なないが、運気や生気が、がっくり落ちるらしい。
つまり生きる力が半分になるのだ。
それは遠慮したい。
「これからよろしくね」
「はあ?」
私が無表情のままそう言えば、男はマヌケな声をあげた。
ポカンと口をあける男に、私は追い打ちをかける。
「私、そんな大きい望みってないから。貴方は当分帰れないってこと」
「そんな!嘘だろ!」
「嘘じゃないわよ。ご愁傷様」
嫌なら出てけ。
魂半分もとられるなんて御免だ。
見習い卒業の目前で、私みたいなのに当たるなんて運が悪い悪魔だ。
怨むなら、魔法陣を描いた、この部屋の前住人を怨んでくれ。
私は男、いや、悪魔に手を合わせたのだった。
行きに強い力で作られた道を通って来たらしい男が、その道をもう一度通って帰るには相当な力がいるのだという。
高位な魔法陣なら、なぜ見習いが来るのか。私は、誰に言えば良いのかわからない文句を飲み込む。
そして男に尋ねた。
「貴方が帰るには、私はどれくらいの望みをいえばいいの?」
「最低でも、魂を半分くらい頂くに値する望みがいる」
「半分!?」
「ああ。なんかないか。一世一代の願い」
男が、ほらほらと手を伸ばす。私はその手を払いのけた。
そんな気軽に一世一代の望みが言えるか。
というか、そんな望みはない。
嘘をついて叶えてもらってもいいが、嘘の望みの為に魂を半分も取られるのは御免だ。
男によると、魂を半分とられたくらいじゃ死なないが、運気や生気が、がっくり落ちるらしい。
つまり生きる力が半分になるのだ。
それは遠慮したい。
「これからよろしくね」
「はあ?」
私が無表情のままそう言えば、男はマヌケな声をあげた。
ポカンと口をあける男に、私は追い打ちをかける。
「私、そんな大きい望みってないから。貴方は当分帰れないってこと」
「そんな!嘘だろ!」
「嘘じゃないわよ。ご愁傷様」
嫌なら出てけ。
魂半分もとられるなんて御免だ。
見習い卒業の目前で、私みたいなのに当たるなんて運が悪い悪魔だ。
怨むなら、魔法陣を描いた、この部屋の前住人を怨んでくれ。
私は男、いや、悪魔に手を合わせたのだった。