悪魔と私
4
「それ、どうしたの?」
奇妙なふたりぐらしをはじめて一週間。
もともと仕事で家にはあまり帰らないので、朝晩顔を合わせるだけの悪魔との生活にも慣れてきたころ。
家に帰った私は目を見開いた。
悪魔がテレビを見てゲラゲラと笑っていたのだ。
「買ったんだ。暇だったから」
テレビから目を離さずに答えた悪魔の言葉に首を傾ける。
買った?
どうやって?
お金はどうしたのか。そもそも、悪魔の姿は私以外には見えないのではなかったのか。
私のそんな疑問に悪魔は簡潔に答えた。
「金はアンタの貯金をおろした。姿は、意識すれば誰にでも見せられる」
そうか納得だ。
いや、ちょっと待て。
「私の貯金おろしたって言った?」
「ああ、悪いか?どうせ使わないだろ」
テレビがコマーシャルに移り、ようやく私と目を合わせた悪魔は、銀行印と通帳をひらひらと振って見せた。
「返して!」
私は印鑑と通帳を奪い返すと、仕事用の鞄にしまった。
明日からは持ち歩こう。
「なんだよ。なんでそんな怒ってんだよ」
「勝手にお金使われたら、誰だって怒るわよ」
「アンタ、そういうのに興味ないと思った」
「貯金は趣味なの!」
「……マジかよ。趣味かよ」
悪かった。と案外素直に謝る悪魔に、バイトして返すように約束させて、私は苛立ちを納めるべくシャワーを浴びる。
バスルームから出ると、悪魔はぼやきながら、私の携帯でバイトの求人を読み漁っていた。
「本気でバイトするの?悪魔なのに」
「アンタがやれって言ったんだろ。つか、悪魔として認めてくれるなら早く望みを言え。俺を帰らせろ」
「無理」
「はあ、なんで俺はこんなヤツに呼ばれちまったんだ」
「別に呼んでないから」
「いつもそれだな」
そう言って携帯から顔を上げた悪魔が目を見開く。
あ、そういえばバスタオル巻いただけだった。
風呂場に着替えを持ち込むのを忘れたのだ。
「なんつー格好してんだよ、早く服着ろ!」
「やだ。また鼻血」
「うるせー。アンタ外見だけは俺の好みなんだよ。早く服着ろ。襲うぞ」
「最低。溜まってんなら外で晴らしてきてよ」
「女がそういうこと言うな!」
他人と暮らすのは難しい。
少し危機を感じた私は、棚から服を掴みとり、バスルームに引きかえしたのだった。
奇妙なふたりぐらしをはじめて一週間。
もともと仕事で家にはあまり帰らないので、朝晩顔を合わせるだけの悪魔との生活にも慣れてきたころ。
家に帰った私は目を見開いた。
悪魔がテレビを見てゲラゲラと笑っていたのだ。
「買ったんだ。暇だったから」
テレビから目を離さずに答えた悪魔の言葉に首を傾ける。
買った?
どうやって?
お金はどうしたのか。そもそも、悪魔の姿は私以外には見えないのではなかったのか。
私のそんな疑問に悪魔は簡潔に答えた。
「金はアンタの貯金をおろした。姿は、意識すれば誰にでも見せられる」
そうか納得だ。
いや、ちょっと待て。
「私の貯金おろしたって言った?」
「ああ、悪いか?どうせ使わないだろ」
テレビがコマーシャルに移り、ようやく私と目を合わせた悪魔は、銀行印と通帳をひらひらと振って見せた。
「返して!」
私は印鑑と通帳を奪い返すと、仕事用の鞄にしまった。
明日からは持ち歩こう。
「なんだよ。なんでそんな怒ってんだよ」
「勝手にお金使われたら、誰だって怒るわよ」
「アンタ、そういうのに興味ないと思った」
「貯金は趣味なの!」
「……マジかよ。趣味かよ」
悪かった。と案外素直に謝る悪魔に、バイトして返すように約束させて、私は苛立ちを納めるべくシャワーを浴びる。
バスルームから出ると、悪魔はぼやきながら、私の携帯でバイトの求人を読み漁っていた。
「本気でバイトするの?悪魔なのに」
「アンタがやれって言ったんだろ。つか、悪魔として認めてくれるなら早く望みを言え。俺を帰らせろ」
「無理」
「はあ、なんで俺はこんなヤツに呼ばれちまったんだ」
「別に呼んでないから」
「いつもそれだな」
そう言って携帯から顔を上げた悪魔が目を見開く。
あ、そういえばバスタオル巻いただけだった。
風呂場に着替えを持ち込むのを忘れたのだ。
「なんつー格好してんだよ、早く服着ろ!」
「やだ。また鼻血」
「うるせー。アンタ外見だけは俺の好みなんだよ。早く服着ろ。襲うぞ」
「最低。溜まってんなら外で晴らしてきてよ」
「女がそういうこと言うな!」
他人と暮らすのは難しい。
少し危機を感じた私は、棚から服を掴みとり、バスルームに引きかえしたのだった。