ハートの形した花
郁美さんに強引に西田と郁美さんの部屋へ連れて行かれた・・・拉致と言ったほうがしっくりくるな。
そこには、西田がいた。
「じゃあ、若いもんでごゆっくりー」
郁美さんが部屋を出ていき、俺と西田は二人っきりになった。
「で、何の用ー?」
西田は機嫌がいいようだ。
話は戻るが、俺が知っている絵が上手い人は、西田あずさ。
こいつしかいない。
理科の教科書の表紙のカエルの絵を完璧に移すほどの画力だ。
適任だろう。
俺も最初、納涼大会をするとなった時に、誘ってみようと思っていたメンバーの一人なのだが、琴吹と同様に、俺のことを嫌いだと思っていた。
そういう経緯で、渋っていたわけだ。
琴吹は、西田が俺のことを嫌いとは一言も言っていなかった。
むしろ、ここへ仕向けたのは琴吹の方だ。
十分、自信の材料は集まってはいるのだが、それでも心配だった。
それは、「人は違う」からだ。
琴吹は琴吹。西田は西田なわけで、
琴吹が西田にはなれない。
西田が琴吹にもなれない。
つまり、西田が考えていることを琴吹が100%を理解することは、物理的に不可能なのだ。