ハートの形した花





やれやれ、やっと座れる。




俺は、席に着いた。




「京介の負けやな」




隣の席の高柳が肘をつきながらそうつぶやく。




高柳翔子(たかやなぎしょうこ)。
俺と同じサッカースクールに通う、関西人。
ショートカットの似合う、一応女子。
ただ、俺は、こいつを女子とは認めていない。




「何それ?どういう意味なん?」




俺は、身体を乗り出して聞いた。




「由美ちゃん、転勤したやん」




あ、そうだった。
由美先生は、二年生の時の俺たちの担任で、三年が終わる頃に転勤して、
今は、津島にある小学校で勤務していた。




つまり、それを高瀬は知ってて、知らないフリをしたのだろう。




成長したというか、俺が浅はかだったというか、
相生の件といい、今回も俺の負けだ。




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