ハートの形した花




相生は、自分の席について、読書をしていた。




ピンクのカバーの分厚い本。
なんていう題名の本なのかは、わからなかったが、
おそらく、ピンク=恋愛。
そんなところだろう。




「京介くん、春休みどうだったー?」




香恋が俺に抱き付いて聞いてくる。




「春休み?ああ、目が覚めて、宿題やって、そんで腹が減ったら飯食べて、また寝て、で、夕飯食べて、風呂に入りながら歯を磨いて、眠くなったら寝るって感じ」




なんていうと、何やら寂しい新小4だと思われるだろう。
虚偽報告でもしておくか。





「広島のばあちゃん家行ったよ」




「あれ?京介くんって広島におばあちゃんいるの?」




「うん。母さんと父さんが広島の人やけんね」




「そうなんだ!ってことは、香恋もいずれは行くことになるんだ」




「はあ?どういう意味?」




「いずれは結婚するんだから。私達」




いつそんな約束をしましたか?
こいつの能天気ぶりは相変わらずらしい。





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