ハートの形した花





「まあ、あんたが宇宙人だったとして、何で愛媛のこんな田舎にいるわけ?」




何となく意味はわか・・・いや、わからない。




「好きでいるんやないよ」




「じゃあ、何でここから出ようとしないの?」




ここから出る?
考えたこともなかった。




俺は、ここへ来た経緯は、父さんの仕事の都合だ。
ついて行かないといけないわけでもなかったけど、だからと言ってついていかなかったら、生活ができない。




父さんだけ単身赴任をするという方法も確かにあったけれど、何より父さんと離れて暮らすのは嫌だった。




だからと言って、苦渋の選択というわけではない。
俺は、ここという場所へ来ることを密かに楽しみにしていた。
知らない場所へ行くことは、期待と不安の半々だ。
まあ、俺の場合は不安はなかった。




だから、ここが嫌かとか、逃げるとかそういう選択肢は考えてもみなかった。
よくよく考えれば、ここから逃げることだって・・・可能なもんか。
常識的に考えてみろ。小学4年生が知らない場所へ一人で行って暮らしていけるわけがない。




「出れるわけないやん」




俺は、そう答えた。




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