ハートの形した花





「え?何?裏切るわけ?」




「そうじゃない」




「じゃあ、何で?」




「あの、俺思ったんやけど、九はまだここにきて一日も経ってないやん?」




「いや、昨日はホテルに泊まったから、実質は一日経ってるけど?」




「うん。まあ、でも日が浅いってことには変わりないやん?俺、思うんやけど、九が思っとるほど、ここって悪い場所やないと思うんよね」




これは決して九を思いとどまらせるためではなく、本心だった。




「やけん、しばらくここに居ってみん?俺、九がここを好きになってもらえるようにいろいろやってみるけん。それでもつまらんって思ったんなら、その時は、一緒にここ出よ?」




九は黙って聞いた後、口を開いた。




「ここって楽しいこと、あるの?」




「そりゃあるよ。川でエビとかとったり、あそこの神社には夏になったらセミもおるし、それに夏祭り。あれはいいよ。ダンス踊ったり、大きい牛みたいな鬼が練り歩いたりしてさ。あ、花火もすっごい綺麗。で、夜店も出たりして。運動会も盛り上がるんよ。去年はリレーで優勝できたし、ああ、あの感動は忘れられんな。あとは、冬。ここでも雪が積もるんやけど、学校で雪合戦したり・・・」




俺は、夢中で話していた。




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