極彩色のクオーレ





ニコは動かなかったはずの腕を動かしてティファニーの肩を掴み、上体を起こした。


いきなりのことにティファニーは少し驚いたが、とっさに彼の体を支えようと手を伸ばす。


彼の体は小刻みに震えていて、カタカタと機械の回る音が聞こえた。



「……人を殺したのに、こうして生まれ変わって、たくさんの心を覚えられました。


人を好きになることができて、ずっと長い間壊されそうになってきたけど、こうして大切にしてもらえました」



声が聞こえる。


それは戦場で聞いてきた声ではない。


この街や戦場ではない別の場所で耳にしてきた人々の声だった。


姿も浮かぶ。


ニコが愛おしく想う人々の姿が見える。


誰も悲しい顔をしていなかった。


誰もが楽しそうに笑っていて、温もりを感じた。


そうだ、人は冷たくない、触れれば励まされるほど温かいんだ。



「ティファニー……ありがとう」



ニコは両手でティファニーの顔を包むと、そっと額同士をくっつけた。


片腕をニコの肩に回したまま、ティファニーは左手を彼の片手に添えて、慈愛に満ちた表情になった。


とめどなく涙が落ちていく。




< 1,174 / 1,237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop