極彩色のクオーレ
「ううん、お礼を言うのは私の方だよ。
ニコにはありがとうじゃ言い足りないくらい感謝してる。
……私の家族になってくれてありがとう。
ずっと傍にいてくれて嬉しかった。
私も、ニコと一緒にいられて本当に良かったよ」
「君の家族になれて……隣にいられて、幸せでした……。
ティファニー……君の心を、僕に教えてくれた心を、忘れないで。
セドナたちにも、街にいるみんなにも……覚えていてほしい。
忘れないで……どうか、幸せに……生きて、ください……」
「うん、うん……ありがとう。
ニコが私にしてくれたことも、教えてくれたことも、全部忘れない。
忘れないでこれから生きていくから……。
生きて生きて、どんなに辛くなっても諦めたりしないから……っ」
――ピシッ。
羅針盤に、長く深い亀裂が走った。
ニコの右手が力なく蜻蛉花の上に落ち、頭もそちらへ流れてティファニーの肩に倒れこむ。
そうして間もなくニコの体から、一切の機械音が途絶えた。
灯火の揺らめきが今、掻き消えた。
静寂が無数の刃と化して、この場にいる全員の鼓膜に突き刺さる。
それは何よりもセドナたちの耳を胸を痛めた。