極彩色のクオーレ
「…ニ……コ?」
ティファニーはどうにかニコの体に震える腕を回した。
ゆっくりと自分の腕に抱き直す。
流れる涙をどうしようともせず呆然としたまま、ふとニコの蒼い羅針盤を見た。
いつ砕けてしまってもおかしくない盤からは光が消え、代わりに針が生まれていた。
わずかに残っていた隙間にその針はあった。
色は黄。
太陽の光を受けて輝く月の色。
卵の黄身を思わせる色。
真夏の空へ向かって力いっぱい咲き誇るひまわりの色だった。
どの針よりも明るく眩しくて、とても暖かい。
壊れる間際、大切な主人の腕の中でニコが最期に覚えた18番目の心、『幸福』の心だ。
『……ぼくは、幸せでした』
ぱたり、ぱたり。
ティファニーの涙が、雨のようにニコの左胸を濡らしていく。
わななく唇を動かして、ニコの肩を優しく叩いた。