極彩色のクオーレ
揺するのをやめて膝に寝かせていたニコの上体を持ち上げ、ティファニーは頭を何度も撫でる。
静かに瞼を閉じたニコを見て、やがてそっと語りかける。
「ニコ……そういえば、まだあなたに伝えていなかったことがあったね。
どうして『ニコ』って名前にしたのか。
あのときは恥ずかしくて言えなかったんだけどね……あなたに笑ってほしいと思ったからなのよ。
ちっとも笑わないあなたに『笑顔』の意味を持つ名前をあげれば、いつか笑ってくれると思って。
私と一緒にいて笑顔になれて、お腹を抱えちゃうくらい笑えるようになれたらいいなと思ったから……。
…だけど、今さらこんな……っ、こんなふうに笑って欲しいなんて、私思ってなかったよ……!
こんなふうに笑えても……、ニコ……」
羅針盤にさらに裂傷が入り、欠片がぱらぱらと落ちていく。
ティファニーはニコの肩に顔をうずめて嗚咽を押し殺そうとした。
上下に動く細い肩を見つめて、引き裂かれそうになった胸のあたりをセドナはわし掴む。