極彩色のクオーレ
――ゴウッ!!!
突然、静かだった丘に一陣の風が吹いた。
周りの木々を大きく揺らしながら、天へと巻き上がっていく。
その強さにセドナたちは頭を押さえたり顔をかばったりして、倒れないように踏ん張った。
ティファニーもニコをギュッと強く抱きしめる。
風は蜻蛉花の花弁をちぎり、高く天へと誘った。
途中で風にはぐれた花弁が、虚空と戯れながらふわりふわり降りてくる。
そこに太陽の光が差し込んだ。
透明な花弁たちは、己に日光を通し、様々な色を孕んで燦々と輝く。
顔をあげたセドナたちは、頭上に広がる数奇な光景に絶句した。
心が釘づけにされてしまう。
それでいてどこか恐ろしさをも感じさせる、この世のものとは思えない美しさ。
それはまるで……無色の瞳のよう。
舞い上げられた花びらの一つが、笑みを堪えるニコの頬に触れ、滑り落ちた。
眠っているのかと思ってしまうほどの穏やかな微笑だった。
雑兵から修理屋に造り替えられ、人と心を知りながら何十年もの間動き続けた少年。
数多の光が舞い踊る中で、彼は安らかな眠りについた。