極彩色のクオーレ





「そりゃあ、これはこの世界のどこかで生まれた物語だもん。


そう簡単に耳に届いていたら、ロマンチックの欠片もないじゃないか」



少しの間が空く。


ビジュの近くに立っていた三人の男の子は、彼から距離をとると、わざとらしくひそひそ声のポーズで話し出した。



「ちょっと、聞きました奥さん。


あのビジュの口から『ロマンチック』って単語が出てきましたわよ」


「ええ、聞きましたとも。


わたし、びっくりしすぎて空耳かと思いましたわ」


「あんだけ現実的でえげつないバッドエンドストーリーを考えまくるやつの口とは思えませんね」



三人とも聞こえてるよ~、と対して気にしていない風にビジュは言う。


するとその傍らに、この場の子どもたちの中では年長な女の子が、切り株の端にちょこんと座った。


本を覗きこもうとし、もう少しで見えそうになったところでビジュに閉じられてしまって、少しだけ不満げに頬をふくらませる。



「ねえ、ビジュのお父さんとお母さんって、どんな仕事をしていたの?」


「ん~?お父さんは飾り職人で、お母さんは刺繍屋だよ」


「ぜったい、嘘だ!」




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