極彩色のクオーレ
ティファニーは瞬きして、顎を引いてシャロアを見つめる。
「……うそ。シャロアって、ルースの生まれだったの?」
「ああ、だけど居たのは10歳のときまでだ。
たまたま旅に来ていた人形職人に弟子入りしたのがきっかけで、ルースを離れることになったんだよ。
そんでどこでもフラフラする根無し草になったのさ」
ティファニーは鷹揚に語るシャロアをじっと見つめた。
旅をしている人に会ったことは何度かある。
ずっと故郷に帰っていないという人もいるけれど、その人たちからは少なからず生まれた土地の匂いがした。
だが、シャロアからはそれが感じられない。
自分が暮らしている場所だからというのもあるかもしれないが、まったく見えないのだ。
「ルースの場所自体は嫌いじゃねえけど、この街にはいい思い出が皆無でさ。
来ると思い出しちまうから、極力いたくないんだ」
「だからもう行っちゃうの?」
「おや、引き留めるつもりなのか?」
シャロアがおどけて片眉をくいっとあげる。
すぐにティファニーは首を振った。
「引き留めるつもりで追いかけたんじゃないよ。
シャロアの生きる道だし、シャロアが行きたいのなら留めない。
でも、行くのなら、その前にひとつ教えてほしくて」
「何だ?」
「どうしてニコを捨てたの?」