極彩色のクオーレ
シャロアは立ち上がり、ずり落ちかけたメガネをかけ直す。
ティファニーは羽織っていたカーディガンのポケットから、ハンカチで丁寧に包んだ羅針盤を取り出した。
ニコの体から取り出して、ずっと離さず持っていたのだ。
羅針盤のヒビがそれ以上深くならないよう慎重な手つきで、割れた軸から2本の針を取り出す。
ニコが動いていたとき、どの針がどの心なのか教えてもらっていたので分かる。
「これは?」
シャロアは卯ノ花色の細長い針と柑子色の少し曲がった針をじっと見た。
「ニコがあなたに教わった『楽しむ』と『喜び』の心の針よ」
「これをおれに?」
「旅をするのなら連れて行ってあげて。
ゴーレムのニコをずっと大切にすることができなくても、せめてあの子の心は大切にしてほしいの。
ニコはあなたにこの2つの心を教えてもらえて救われたって話していたから尚更ね。
今まで一緒に居られなかった分、これからは一緒にいてあげて、その方が、きっとニコも喜ぶと思うから」
シャロアはティファニーの顔を見つめ、再び2本の針に目を落とす。
それからコートの内ポケットにしまってぼそりと呟いた。