極彩色のクオーレ
「……やっぱり、25番目を拾ってくれたのがあんたで良かったよ」
「え?」
「おれがルースに来た一番の理由は、あいつの新しい主人がどういう人間かを見るためなんだよ。
だからラリマーと会って話を聞いたとき、丁度いいと思ってついてきたんだ。
別にあいつの選択を疑っていたわけでもねえし、そもそも捨てたやつにそんな親みてえなことをする権利もないけどさ」
ニコを捨ててしまっても、彼に対する親心のようなものまで失くしてしまったわけではなかったようだ。
やはり、シャロアは自分で言うほど性根の曲がった人間ではないのではとティファニーは感じた。
「あんたが拾ってくれたおかげで25番目は幸せになれた。
おれの傍に置いていたら、その針の心を教えることはできなかったよ……本当にありがとう」
シャロアはティファニーの手の中にある羅針盤を、そこにある黄色の針に目を向ける。
ふいに浮かべていた表情をなくし、キャスケットを外し深々と頭を下げた。
彼の真摯な姿にティファニーは何も言えなかった。
余計なことを言わずその姿を受け止めなければ失礼な気がしたのだ。
一言も交わさないまま別れ、彼の背中が見えなくなるまで見送った。
見送りながら、ニコはシャロアと離れなければ本当に幸せになれなかったのだろうかと疑問に思い、答えのないものだと思って考えるのをやめた。
そうして2色抜けた羅針盤を包み直して、静かに家に戻った。