極彩色のクオーレ
春、数多の花が精一杯広げるなか、隅の方で控えめに、だけれども凛と咲く花。
この花にはいつしか、『いつまでも貴方を忘れません』という言葉がつけられた。
いつまでも、ニコのことは忘れない。
それがすべての花束にこめられているのだ。
壊れてしまってからもなお、ニコは仲間に愛されている。
きっとこの先もずっと、生きている限り。
ふいに冷たい風が吹いてきた。
寒さに粟立つ腕を抱えてティファニーは立ち上がった。
「ちょっと冷えてきたわね、リビアにも言われたけど、身体を冷やしてはいけないから、もう家に戻るね、ニコ。
明日頼まれていた刺繍を街に届けに行くから、また花を買ってくるわ」
木々がざわざわと枝葉をこすり合わせる。
まるで返事のようだった。
暮れなずむ空を見上げてからもう一度墓石を見、ティファニーはペンダントをそっと握った。
「……ニコ、あなたが覚えた最後の針は、これから産まれてくる子にプレゼントしようと思っているの。
あなたに教えてもらった心や、みんなから教えてもらった心、私やセドナが持っている心……それも全部伝えるつもり。
明るい心も、暗い心も全部教えて、この子が素敵な心を持てるようにしたいわ」