極彩色のクオーレ
ニコの瑠璃色の心臓に宿った、極彩色のような豊かな心に。
心を伝えたい思いは、産まれてくる子どもだけに対するものではない。
この先生きていくなかで出会い、関わっていく人すべてに、自分の胸にある心を伝えたいのだ。
ニコから教えられた多くのことを、ここだけに留めておくのは寂しすぎる。
自分の心で感じたことを、自分の言葉や表情に変えて誰かに伝えていく。
暗い気持でもいい、もちろん明るい気持でもいい。
心に宿った感情を大切にして、それを内側にこめるのではなくて外へ発信する。
そうすればきっと、この世界はみちがえるはずだから。
薄桃色の目隠しを解いて、真っ暗闇の世界から脱出できたあの日のように。
「ティファニー、ただいま」
カーテンが揺れる音がして、セドナの声が聞こえた。
庭に降りる足音も耳に届いた。
「お帰りなさい」
「おう……って、どうした?なんか嬉しそうだな」
「そう見える?」
「いつもより笑顔だから」
セドナは大股で庭を横切り、ティファニーの前に立った。
ひょいと首を伸ばしてニコの墓石を見る。
ティファニーも墓石を振り返って、シャロアが届けたカランフラワーを示した。
「今ね、シャロアから届いたお花を供えていたところなの」
「またカランフラワーか?」
「そうだよ」
「毎年恒例だもんな」