極彩色のクオーレ
セドナが苦笑いを浮かべ、「まぁあいつが供えたいと思うのならいいけど」と続けて呟く。
カランフラワーの花言葉を教えようとティファニーが口を開こうとしたとき、一陣の風が吹き抜けた。
先ほどよりも木々がざあっと大きく揺れ、花の匂いが強くなる。
その風と戯れようとする髪をおさえたとき、ティファニーは耳にかすめた風の音を聞いた。
そして、はた、と空を仰ぐ。
そこには連なって巣へと帰る数羽の鳥がいた。
「え、今……」
セドナもそちらを見上げながら声を漏らす。
夕焼け空に消えていく鳥たちにティファニーは笑みを深め、少し戸惑っている様子のセドナを振り返った。
「セドナ、家に入ろうよ」
「うん……って、本当にどうしたんだよ。さっきよりも笑顔じゃねえか」
「怒っている顔の方がよかった?」
「勘弁してくれ」
セドナが大げさに顔をゆがめて首を振る。
くすくす笑いながら、ティファニーは夫の背中を押してテラスに向かった。
さて、どんな風に伝えてあげよう。
唐突に話してしまおうか、それとも想像を掻きたてるように話してあげようか。
どちらにしても、すごくびっくりした顔になって、そうして一緒に喜んでくれるはずだ。
「セドナ、話があるの」
「話?」
「うん、びっくりするくらい幸せな話」
「え?」
セドナがきょとんとした顔で振り返る。
胸にこみあげるくすぐったいおかしさに笑うティファニーの胸で、8本の針が煌めいた。
―完―