極彩色のクオーレ
椅子から立ち上がってセドナの背中を叩き、ルーアンは眼鏡を押し上げた。
「さあやるぞ、新人職人。期限は待ってはくれないんだ。
認められて早々、遅延なんかしたら評判はガタ落ち。
周りの店のいい笑い種になっちまうぞ」
「そんなヘマは絶対にしません、余裕を持って完成させます。
えっと、まずは紅珊瑚石の彫刻をやって。
それが終わったらペリムストーンの細工をして……」
「合成鉱物の方も忘れんなよ」
仕事の話が始まる。
少年は二人に向けて軽く礼をして、接客スペースを通り外に出た。
飾り職人ではないが、仕事話を立ち聞きするわけにはいかない。
昼下がりの澄んだ青空が、頭上に横たわっていた。
あの森の中で見上げた空と、同じ蒼色。
薄雲を追いかけながら、少年はセドナとルーアンの姿を思い浮かべた。
それに、かつての自分と『マスター』が重なる。
(ぼくも、半年前はああでしたね……)
初めて会った時から、セドナのことが何となく気になっていた。
女将にお使いを頼まれなくても、この工房には来ていたかもしれない。