極彩色のクオーレ
「おーい、修理屋!!」
黙々と路地を進んでいると、後ろから追いかけてくる音と名前を呼ぶ声がとんできた。
振り向いた先には、走ってくるセドナの姿があった。
「お前、黙って行くこと、ねえだろ……っが」
少年の前で足を止めて、セドナは深呼吸をした。
弾んだ息を整える。
「すみません、仕事の邪魔になると思ったもので。
それで、どうしましたか?」
「あ、えっとー……なんつーか、その。
お前、あと3日ルースにいてくれないか!?」
セドナは指を3本立て、少年の顔に突きつけた。
反射的に少年はのけぞる。
「3日ですか?なんでまた」
「気にすんな、とにかく3日だ。待てるか?」
「まあ、待てますが……」
手を離し、セドナは数回頷いた。
少年も無理な体勢から戻り、セドナを見下ろす。
「よし、約束だぞ」
「はい……でも、どうしてですか?」
「ん?内緒だ、じゃな」
それだけ言うと、セドナはくるりと回れ右をして工房へ走っていった。
引き止める間もなく背中は遠ざかり、工房へ消えていく。
「……嵐みたいですね」
路上に取り残された少年はぽつりと呟いた。
意味なくとっさに伸ばした手を軽く握りこみ、左胸に当てる。
ここにはセドナから教えられた”心”がある。
苦しいけれど、あるからこそ、一歩前に踏み出せる”心”。
「……見習い卒業、おめでとうございます」
相手がいなくなった路上で、少年はぺこりと腰を折った。