極彩色のクオーレ





1時間ほど経過して、セドナが到着した。


少年が3時間近く歩いた道のりを、ずっと走ってきた様子である。


足元がおぼつかなかった。



「セドナ」


「おっ……い、ついたあっ……」



セドナが少年に倒れこんだ。


少年は慌てて抱きとめ、どうにか踏ん張る。


セドナの身体は汗だくで火照り、息は激しく切れている。



「どうしたんです?」


「るっせ……ちょい休ませ、ろ……」



セドナは大岩にもたれかかった。


額ににじむ汗を拳で拭い、身体をいくらか落ち着かせる。


少年が持っていた水を一口もらって、セドナは彼の手首を掴んだ。



「お前、急ぎじゃないって言ってたよな」


「え?あ、はい」



まだ乱れている呼吸のまま、セドナが頭を下げた。



「悪い、もう1回ティファニーのとこへ行ってくれ。


あいつ、お前にまだ用があるから」


「……もしかして、そのためにテガミバトをぼくに寄越して、ここまで走ってきたんですか?」


「それ以外に何かあると思うか?」



セドナは小さく舌打ちをして、来た道を戻る。


しかし身体は、走る元気があるほどは回復していないようであった。



「急ぎですか?」


「いんや。でも、早く戻るに越したことはないかな」


「分かりました、では失礼します」



え?と顔をあげたセドナを、少年は脇に抱えた。


小柄なセドナは簡単に持ち上げられる。


宙吊りになってしばらくして、セドナは自分が置かれている状況を理解した。



「へっ!?おっ、おい!


俺はまだ歩けるぞ」


「こっちの方が速いんで。


体の調子がおかしくなるリスクがあるからあまり使いたくはありませんが、仕方ないですね」




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