極彩色のクオーレ
「セドナと友達になれたし、刺繍屋になってからいろんな人と関わって、親しくなれた人たちもたくさんいる。
だけど、どんなに仲良くなっても、完全には打ち解けられなかった。
どうしても遠慮しちゃって、自分の気持ちとか、全部伝えることが少しだけ怖くて、できなかった。
セドナに対してもそうなの。
心の底から信用しているけど、色々考えちゃって、結局ここにしまっちゃって悶々とするの。
話しても大丈夫なんじゃないのかな、これって本当に相手を信じていることになるのかな、このこと知ったら怒られるかな……って。
でも、修理屋くんに対してはそうはならなかった。
不思議なんだけど、修理屋くんが相手だと変なつっかかりが全部なくなって、いつもなら隠しちゃうことが、スッと言えたの」
昨晩の、セドナとのやりとりを思い出す。
街の住人に対する気持ちも、家族のことも、少年はすべて教えてもらえた。
遠まわしだが、ティファニーはそのことを言っているのだ。
ティファニーの顔が足元へ向く。
「眠る前とか、修理屋くんを見送ったあととか、一人になったときに考えてたの。
苦しくても辛くても、その人がいてくれれば胸の辺りが軽くなって、息がしやすくなれる。
そういう存在が『家族』なのかなって。
私、独りでいる寂しさには、もう慣れたと思っていたけど……そうじゃなかったの」
優しい音声が、か細く震えていく。
最後の方は掠れて聞こえにくくなっていた。
それでもティファニーは、まだ少年に意識を向ける。
伝えようと必死なのだ。
少年の胸がさらに熱くなっていくのは、彼女の懸命さのせいか、それとも……。
「本当はずっと、家族のような人が欲しくてたまらなかった。
でもそれが分かったら、とても弱虫な女の子になっちゃいそうで……認められなかった。
でも修理屋くんに出会って、一晩ここにいてくれて、そのことに気づけた。
だから、だから……」
胸に当てた両手に、力がこめられる。
肩を小さくし、ティファニーは振り絞るように告げた。