極彩色のクオーレ





「セドナと友達になれたし、刺繍屋になってからいろんな人と関わって、親しくなれた人たちもたくさんいる。


だけど、どんなに仲良くなっても、完全には打ち解けられなかった。


どうしても遠慮しちゃって、自分の気持ちとか、全部伝えることが少しだけ怖くて、できなかった。


セドナに対してもそうなの。


心の底から信用しているけど、色々考えちゃって、結局ここにしまっちゃって悶々とするの。


話しても大丈夫なんじゃないのかな、これって本当に相手を信じていることになるのかな、このこと知ったら怒られるかな……って。


でも、修理屋くんに対してはそうはならなかった。


不思議なんだけど、修理屋くんが相手だと変なつっかかりが全部なくなって、いつもなら隠しちゃうことが、スッと言えたの」



昨晩の、セドナとのやりとりを思い出す。


街の住人に対する気持ちも、家族のことも、少年はすべて教えてもらえた。


遠まわしだが、ティファニーはそのことを言っているのだ。



ティファニーの顔が足元へ向く。



「眠る前とか、修理屋くんを見送ったあととか、一人になったときに考えてたの。


苦しくても辛くても、その人がいてくれれば胸の辺りが軽くなって、息がしやすくなれる。


そういう存在が『家族』なのかなって。


私、独りでいる寂しさには、もう慣れたと思っていたけど……そうじゃなかったの」



優しい音声が、か細く震えていく。


最後の方は掠れて聞こえにくくなっていた。


それでもティファニーは、まだ少年に意識を向ける。


伝えようと必死なのだ。


少年の胸がさらに熱くなっていくのは、彼女の懸命さのせいか、それとも……。



「本当はずっと、家族のような人が欲しくてたまらなかった。


でもそれが分かったら、とても弱虫な女の子になっちゃいそうで……認められなかった。


でも修理屋くんに出会って、一晩ここにいてくれて、そのことに気づけた。


だから、だから……」



胸に当てた両手に、力がこめられる。


肩を小さくし、ティファニーは振り絞るように告げた。




< 265 / 1,237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop