極彩色のクオーレ
「あ、あの……修理屋くん?」
返事がなくてティファニーが困惑する。
少年はさらに近寄り、解けた彼女の右手を包んだ。
ティファニーがおずおずと少年に顔を向ける。
「ティファニー、『ぼくと一緒にいたい』。
そう言ってくれましたね?」
「う、うん」
「それなら、ぼくの新しい主人になってください。
ゴーレムは主人のために動きますから」
「え?えっと、どうすればいいの?」
「ぼくに名前をください。
『名前を与える』ということは、その対象物の所有者になることと同じ意味です」
だから捨てられた少年は、マスターが呼んでいた『25番目』という名称も捨てた。
もう一度名前をもらい直して、彼のゴーレムになるために。
だが、もうマスターから名前をもらう必要はなくなった。
彼を脳裏から追いやり、目の前にいる少女のことだけを考える。
「……それだけでいいの?」
「はい、それだけです」
「分かったわ。えーっと、どうしよう……」
ティファニーが顎に手を当てて考えこむ。
どんな名前をくれるのだろうと、少年は少しだけわくわくした。