極彩色のクオーレ
「べつに怒ってねえよ」
ティファニーの言葉に、セドナがぷいと横を向く。
すると妙な音が庭に鳴った。
少年は首をかしげ、顔を赤らめるセドナを見る。
「セドナの腹の虫ですか」
「う、うるっせえ。こっちは昼過ぎまでに仕事切り上げて、飯もそこそこにお前を追いかけたんだぞ!
腹が減ったって仕方ねえだろうが」
「あはは、じゃあちょっと早いけど、晩ご飯の支度しようか。
あ、お茶菓子もあるけど、食べる?」
「どっちも食べる」
返事をするや否やセドナは庭の入口へ引き返し、少年の荷物を背負う。
ティファニーも歩き出して、棒立ちする少年の脇腹をつついた。
「行こう、ニコ」
「はい」
(この人が、ぼくの新しい主人……)
改造してもらった元主よりもはかなげな、野に咲く花を思わせる雰囲気の少女。
けれども言動の端々に感じられる、可憐な外見の奥にある芯はしっかりとしていて、薄っぺらではない。
そこも、マスターに似ている。
少年は――ニコは、差し出された主の手を取った。