極彩色のクオーレ
「そういやさっき聞こうと思って、聞きそびれちまったんだけどさ。
おまえは、どうしてルースに来たんだ?」
少年はパチパチ瞬きをする。
しばらくの間を挟んで、彼はこう答えた。
「別に急ぎじゃないんですけど。
探している人と、覚えたい物があるから、ここへ来ました」
一瞬。
少年が浮かべた表情に、青年は何故かギクリとした。
さらに堅くなった顔つき。
それに加えて、醒めきった様な、けれども激しい怒りを隠しているようにも感じる眼。
青年は畏怖を覚えながらも、その一瞬に見とれてしまった。
何も敵意を向けられていないのに、背筋が粟立つ。
(なんだ、こいつ……)
我に返った時には、既に少年は青年に背を向けていた。
訪れた理由の意味を知りたくて、青年は手を伸ばしかける。
しかしそれは、部屋から出てきた酔っぱらいに絡まれたせいで、とうとう聞くことはできなかった。