極彩色のクオーレ
「ギベオン、ありがとう!」
「だぁあ、礼とかいいから早くしろ!
セドナ、何をニヤニヤして見てるんだ、早く縄をほどいてよ!」
「へいへい」
にやりと笑みを浮かべながら、セドナは罠の解体にとりかかる。
ティファニーはまだ左胸をさすっているニコに近づいた。
「ニコ、どうしたの?」
「『勇気』と、『希望』の感情か」
「……ケセラたちにその"心"をもらったの?」
ニコに手を重ねて、ティファニーはゴーレムに微笑みかける。
小さく頷き、ニコはギベオンに視線を向けた。
ケセラという『友達』ができたこと。
それに対してギベオンの中に芽生えた感情は、これから過ごしていく日々を楽しみにする感情だった。
今までどうとも思っていなかった未来を、進んで考えようとしなかった先のことを、わくわくしながら想像している。
友達がひとりできるだけで、人間はこんなにも生きることを楽しみにできるものなのか。
ギベオンの”心”を通して、また知らない人間の一面を感じられた。
複数の網を飛ばす仕掛けを外す最中に転んだケセラを、ギベオンが怒って叩いている。
相変わらずのやりとりが、どこか微笑ましく感じられた。
「いい友達になりますかね」
「大丈夫だよ。とっても素敵な心を持っている職人同士だもの」
ニコの寂しげな呟きに、ティファニーは強く頷いた。