極彩色のクオーレ
--
「あ、この歯四重車が破損していますね」
ルーアン工房の作業場。
その隅に置いてある研磨機の修理を頼まれたニコは、工具とランプを持って内蔵機械を確認した。
ほう、と依頼人のルーアンが息をもらす。
「わしらが一日苦戦しても分からんかったのに、さすがだな、ニコ」
「ありがとうございます」
ニコはピンセットを持ち、歯車を取り除く。
歯車ばかりの鉄くずを集めた籠を彼の脇に置き、ヒーラーが「ふん」と、師匠に分からないように鼻を鳴らした。
エレスの首飾りの一件を、まだ根にもっているのだろうか。
気にもとめず、ニコは新しく歯車をつくる。
「いい友達ができてよかったな、セドナ」
「え、あ、はい?」
ルーアンに聞かれて、セドナは手元から顔をあげる。
ゴーグルの奥でぱちぱちと瞬きした。
首飾りづくりに夢中になっていて、聞いていなかったらしい。
「こんな凄腕をもった職人と友達になれること、そうあるもんじゃないぞ。
今のうちに、いろいろ技術を盗んでおきなさい」
「えっと……すみません、全然聞いていませんでした」
セドナはゴーグルを額にずらし、ひょいと頭を下げる。
やれやれとルーアンがため息をついた。