極彩色のクオーレ
ニコがぺこりと頭を下げると、ラリマーは彼の肩を叩いた。
遠慮のない強さに少しよろめく。
「おう、オレはラリマーだ、よろしくな」
「それより、そのドアどうするんだよ、蝶番が真っ二つじゃねえかよ」
ラリマーはセドナに言われて振り向き、顔をひきつらせた。
完全に気付いていなかった様子である。
「え?ららー……あれ、このドアって内開きじゃなかったっけ?
ニコ、直しといて」
「調子乗るんじゃねえぞ、おま……っ」
セドナがラリマーの胸板を叩いて、その表情が硬直する。
ラリマーは首を傾げたが、背後に感じる不穏な空気に冷や汗をかいた。
「久しぶりだな、ラリマー。
4年前に騒ぐだけ騒いでふらっといなくなって、何にも連絡しねえでふらっと戻ってきやがって。え?
この放蕩ぼんくら大バカアホ孫が……」
ぎぎぎ、と軋んだ音が聞こえてきそうな様子で、ラリマーが振りかえる。
いつの間にかそこに立つ祖父に、引きつった笑みを浮かべて片手を挙げた。
「あー……ひ、久しぶりッス、じいさ」
ラリマーが言い終えるより早く、ルーアンは杖を放って腕を伸ばした。
とっさに後ろへ逃げようとした孫の奥襟を捕まえる。
「今さらどの面下げて帰ってきたこんのボケオラァァアア!!」
「どわあああっ!?」
ルーアンよりも体格のあるラリマーが軽々と投げられる。
美しく弧を描いてラリマーは飛んでいくが、着地に失敗して庭にべしゃりと転がった。
投げ飛ばされるはずみでラリマーが作業テーブルに当たり、積まれていたいくつかの工具が宙を舞う。
「あっぶね!」
セドナは作業版を盾にして、ドライバー直撃をどうにか免れた。
ニコはスパナを取り出し、それを使って工具を弾き飛ばす。