極彩色のクオーレ
背中を地面につけ、臀部を空へ向けていたラリマーが、体勢を変えながら痛そうに丸まる。
「うぉ……あいっかわらず強烈だな、じいさんの投げ技……
大丈夫なのか?腰とか悪くして、病院に連れこまれても知らねえぞ」
「あ゛?お前みてえな根性なしの一人や二人、投げたくらいでどうもせんわ、アホ」
「でも杖ついてるじゃん。
なんなのそれ、腰がヤバイから持ってるんじゃないの?」
「バカもん、持ってないと急に見に来る医者がうるさいんだ」
杖を拾いルーアンが胸のあたりについた埃を払う。
それから、顎で大破したドアを指した。
「ニコ、悪いんだが、この愚か者が壊しやがったドアも直してくれ。
修理代は増やしておく」
「はーい」
ニコが間延びした返事をした。
途端、ラリマーのエメラルドグリーンの双眸がきらりと輝く。
「お、修理屋の登場か。
おいセドナ、あいつの腕前ってどんななの?」
ラリマーとともに吹っ飛んだ工具を拾いに庭に出たセドナが、彼の後頭部を軽く殴った。
「少しは反省しろよ、凄腕だよ」
「へえ、そんなにいいの」
お手並み拝見、とラリマーはその場に胡座をかいてニコを観察する。
ニコは倒れたドアを起こすと、右手で工具をくるくる回した。
それを2ヵ所の蝶番の部分にかざす。
カシャンッ――
すると、もうドアは壊れる前の状態になっていた。
「……え?」
ラリマーは身を乗り出し、拳で両目をこすって凝視する。
ニコは破損部分に工具をかざしただけ、ラリマーの目にはそう映った。
しかし、次の瞬間にはもう直っていた。
あの一瞬で、彼はどのように腕を動かしたのだろうか。