極彩色のクオーレ
ラリマーが下でまだ何か言っているようだが、反響しているせいで聞き取れない。
聞くのが面倒になったニコは、すべて無視して階段をのぼった。
ギベオンの声も聞こえるので、ラリマーは掃除の方へ連れ出されたようである。
「おお……これはすごいですね」
最上階へと続く、蓋状のドアから首を出して中をのぞく。
窓も何もない塔の中をランプなしでのぼってこれたのは、ドアと四方の壁にあるアーチ状の窓が開いているおかげだろう。
ニコは床に手を付きながら階段をのぼりきり、部屋の状態を確認した。
むわっと埃の臭いが強く、あちこちには蜘蛛の巣が張ってある。
部屋の中央には、時計塔を動かす大きな仕掛けが設置されていた。
風雨をしのぐため、ガラスの箱で蓋をしている。
「これが時計塔の心臓ですか……。
懐中時計とつくりが少し似ていますね」
大小さまざまな歯車は、役目を忘れたかのように眠っている。
元はきれいな鈍色をしていたであろうが、錆のせいで不恰好になっていた。
これでは直しても、またすぐに動かなくなってしまう。
「ひとまず、確認してみますか」
ガラスのふたを外して、ニコは点検を始めた。
そこへギベオンが、ドアからではなく開け放した窓の一つから入ってくる。