極彩色のクオーレ





時間をかけて丁寧に調べ、ニコは複数の部品の破損と巻き込まれたネズミの腐敗した死骸を発見した。


動かなくなった原因は、この二つらしい。


落とさないよう、他の部品まで壊さないように取り除き、錆はきれいに磨いて落として、代わりの歯車を取り付ける。


それ以外にも劣化している個所がないか確認して、一度螺旋階段に戻った。


振り子の調節も行い、仕込みパイプの調子も確認する。


ギベオンたちが掃除して埃をきれいに取ってくれたおかげで、作業はスムーズにできた。



「――よし、これでもう異常はないはずです」



最後に日焼けによる劣化の激しいを修理して、ニコは窓からこちらをのぞくギベオンを見上げた。


ギベオンがぱちぱちと拍手を送り、部屋の奥にあるレバーに触れた。



「じゃあ、動かしてみるね」


「どうぞ」



ガコンッ



どこかで重い音が起き、ゆっくりと歯車が回り始めた。


螺旋階段をのぼっていたケセラは、揺れ出した振り子に怖がりながらも目を輝かせる。



カチン



長針が暮れなずむ空を真っ直ぐ指した。


刹那、パイプが隠れる壁が数か所開き、一斉に音を奏でだす。


何年も動いていなかった時計塔の時を告げる声に、街の人々は手を止めておや、と耳を澄ませた。


近くにいた人々は、驚きながら古ぼけた時計塔を見上げる。





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