極彩色のクオーレ
そこには桃色を基調に、布でかわいく飾り付けを施された馬車があった。
引いているのは本物の馬ではなく、馬型の人形である。
片側のドアが開いており、その傍に長い黒髪をツインテールに結んだ少女が立っていた。
これまた布をたっぷり使った、裾が足首まであるワンピースを身に纏っている。
ドレスに似たデザインで、人形のように愛らしい格好だ。
しかし、浮かんでいる表情は雰囲気を乱すほど怒りに染まっていた。
「しつっこいわね!何度来ても同じよ!」
少女が桃色の日傘を向けた先には、尻餅をついた金髪の青年がいた。
ここからだとよく見えないが、困惑している様子が背中から伝わってくる。
そして2人の間には、どういうわけかセドナがいた。
青年の肩を支えながら少女を睨みあげている。
決して穏やかな状況ではない、それだけはよく伝わってきた。
青年が少女に向かって腕を伸ばす。
だが、不愉快そうに眉間にしわを寄せ、少女はその手を日傘で叩き落とした。
「何度言ったら分かるの、あんたみたいな未完成品、あたしのゴーレムにふさわしくないわ。
未完成だから学習しないで何度も何度も来るのかしら。
ほんっとに気持ち悪い。もう二度とあたしの前に現れないで!」
「リビア、ワタシはまだ」
「うるさいっ!」
リビアと呼ばれた少女が叫び、持っていた小さな人形を投げつける。
ドスッ、と鈍い音がした。