極彩色のクオーレ
女将に書いてもらった地図を頼りに、少年は区画を進んでいく。
ついでにと渡された紙袋には、いくつかのパンが入っている。
焼きたてで、まだホカホカと温かい。
やはりセドナは、女将お気に入りの客なのだろう。
そうでなければ、ここまで良くしないはずだ。
「えーと、ルーアン工房、ルーアン工房……」
キョロキョロと辺りを見回す。
もう作業を始めているらしく、他の工房の煙突から細く白い煙がたなびいている。
お客の姿もあった。
店で売っている装飾品で満足できない者は直接、工房の職人に依頼しに来ることが多い。
オーダーメイドなのでその分、余計に代金はかかるが。
「あ、見つけた」
目的の看板を発見して、少年はそちらへ真っ直ぐ進んだ。
セドナが働いているというルーアン工房は、他に比べて規模は小さい。
だが完成品の質はとても高く、街ではなかなか人気があるようだ。
両開きの戸は開け放されていて、中がよく見える。
少年は地図をポケットに押し込め、工房に足を踏み入れた。