極彩色のクオーレ
「いい加減にして!
あたしにつきまとわないでよ、この不良品!」
「リビア、そんな言い草はねえだろ!」
セドナの怒鳴り声を無視して、リビアは馬車に乗りこむ。
馬の目がチカッと光り、Uターンして緩やかな坂を下っていった。
ガラガラと激しい車輪の音が遠ざかり、セドナが小石を蹴って苛立ちをぶつけた。
「セドナ!」
「あ、うげ、ラリマー!?何でここに」
呼ばれて振り返ったセドナの顔中に「面倒なやつに見つかった」と書いてある。
後から到着したニコが説明すると、セドナはがりがり頭を掻いた。
ラリマーがわざとらしくきょろきょろする。
「お前こそ、工房にいなくていいのか?
それより、何なに?何があったんだ?
すんげード派手な音が聞こえたんだけどさ」
「楽しんで言うんじゃねえ。
仕事が終わったから、ニコの様子を見にここへ来たんだよ。
そしたら道のど真ん中で、リビアとこいつが揉めてたんだ。
俺も今止めに入ったばっかりだったから、経緯はよく分からねえ」
首を振ったセドナは、まだ道路に座りこんでいる青年に手を差し延べる。
「大丈夫か、立てるか?」
「すまなイ」
かたことな言葉を発して、青年が立ち上がる。
こちらを振り向いた彼を見て、ニコは少しだけ目を見開いた。