極彩色のクオーレ
「もうすぐ妻の誕生日でな。
是非、ブレスレットを作ってもらいたい」
「そぉなんですか~、素敵なご主人サマを持って、奥サマも幸せですねぇ」
「ははは、褒めても何も出んぞ、ヒーラー君」
「そんなつもりではありませんよぉ、失礼しますねぇ」
ヒーラー。
聞き覚えのある名前に、少年は糸目の男をまじまじと見つめる。
昨夜女将の口から聞いた、セドナの兄弟子だ。
セドナとは、明らかに異なる雰囲気を放っている。
同じ職人に師事していても、やはり他人なので、こんなにも違ってくるものなのだろう。
ヒーラーは奥の棚から見本を引っ張り出し、客に見せた。
「奥サマはどのような色がお好きでしょう?」
「そうだな、濃い色の服をよく着ているぞ」
「なるほどなるほど。
それでしたら、こちらのような淡い色の宝石を使って……」
ヒーラーたちが話し込み始める。
終わるまでしばらく時間がかかりそうだ。
来るタイミングが悪かったな、と少年はため息をつく。
仕方ないので暇つぶしに工具を眺めながら、客が去るのを待った。