極彩色のクオーレ
もう一度、地図を睨みつける。
今朝まで滞在していた村の、宿の親切な主人に書いてもらったものだ。
地図職人かと思うくらいかなり正確なところまで書かれている。
だが、さすがにほとんど人が使っていないこの獣道は地図には書かれていない。
しかもこの森には太い道以外に、目印になるようなものが全くと言っていいほどない。
あるのは森、岩、そして獣。
これでどう把握しろと?
「うーむ、森ってのがまさかこんなに迷うところだったとは思いませんでした。
いや、地図なしで旅ができるあいつの方が異常ですよね、絶対。
足元見られる覚悟で、村を出たところで会った水売りに方位磁針だけでも買っておくべき……ん?」
ドドドドドド……
どこからともなく、くぐもった重低音が届いてきた。
体重の重い獣が走っている音だ。
それは段々こちらに近づいてくる。
「なんですか?」
ガサッ!!
少年が虚空に問いかけた瞬間、応答するかのように背後の茂みが激しく揺れた。