極彩色のクオーレ
馬車に乗りこむレムリアンとリビアの姿がよぎる。
一度捨てられたゴーレムと、彼を捨てた造主。
少し時間と迷惑はかかったけれど、それでも二人は関係を修復することができた。
ニコとは違う――それは、リビアが『彼』のような職人ではなかったからか。
2人の姿が掻き消え、代わりに一人の男が目に浮かぶ。
三つ編みにした緑髪に、風になびく黒いコートの裾。
「ニコ?」
やや大きな声でティファニーに呼ばれた瞬間、記憶の中のシャロアの姿が霧散した。
撫でていた腕を降ろして、主が怪訝そうにこちらを見上げてくる。
ニコの左胸の奥を、芽生えたばかりの”心”がくすぐった。
いつの間にかケンカを終えたセドナとラリマーも、ニコを見つめていた。
「本当にどうしちゃったの?どこか悪くした?」
不安げな声に答える代わりに、ニコはその”心”に素直に従うことにした。
つないだままの手を引いて、そっとティファニーを抱きしめる。
ティファニーが戸惑うように息をつめた。
初めて抱くティファニーは、思ったよりも細く、温かかった。
生物特有の鼓動が、直に伝わってくる。
「……もしかして、また誰かに”心”を教わったの?」
落ち着いたティファニーが優しく尋ねると、ニコは頷いて腕に力をこめた。