極彩色のクオーレ
ニコは庭の隅に荷車を置き、丸太を降ろしていった。
獣は乗せたままにしておく。
作業がしやすいように並べ終え、置時計の部品を取りに窓から部屋に入ろうとしたとき、物音に気付いたティファニーと鉢合わせした。
夏らしく、ワンピースは半袖である。
ちなみに暑さも寒さも困らないニコは、年中長袖の服であった。
「お帰り、ニコ」
「ただいまです」
「ずいぶん時間がかかったわね。
それと、森の奥ですごい音が聞こえたけど、何かあったの?」
「うーん、それ、多分ぼくが木を倒すときに使った砲の音です」
「そうなんだ。……あれ、何かへんな臭いがする」
胸をなでおろしたティファニーが、鼻をひくつかせて顔をしかめた。
右手で顔の前をぱたぱた仰ぐ。
「臭いですか」
「うん。鉄が錆びたような臭い」
「ああ、ぼくが仕留めてきた獣の血の臭いだと思いますよ。
襲われかけて倒したけど、そこに放置しておくわけにもいかなかったので。
資材として使おうと、丸太と一緒に運んできました」
確認しますか、と聞かれて、ティファニーが勢いよく首を左右に振った。
森に一人暮らししているとはいえ、女の子だ。
獣の死骸に触りたくないのは当然だろう、しかしニコにはそういった微妙な心境が分からない様子だが。