極彩色のクオーレ
置時計の修理を始めていたニコは、部品を点検しながら答える。
「勿体ないですし、資材として使います。
……といっても、今の時点でそれを活用できる依頼はありませんが」
「それなら売ったらどうだ?
部品加工区画に持って行けば、あっちこっちから『売ってくれ』って頼まれるぜ、きっと」
「うーん、確かに腐らせてしまうのは嫌ですね。
でも、別にお金は必要ないんですが」
「お前ってホントに物欲、てか金に対して欲が無さすぎ。
ティファニーとの生活が苦しくなったら困るだろ?
万が一に備えての蓄えも、あった方がいいもんだぜ」
ラリマーはウォルフィンの尻尾を撫でる。
凶暴な見た目に反して、体毛はとても柔らかかった。
「うーん、それなら、売りに行きましょうかね。
この置時計も街へ届けないとですし、ついでにということで」
ニコは修理が完了した置時計の側面を叩き、音を聞いて不具合がないか確認した。
問題ないらしく、工具をしまう。
「相場が分からないので、一緒に来てもらえますか?」
「いいぜ。おーい、セドナ。
お前もついて来いよ、荷車運び係だ」
「誰が荷車運び係だ、誰が!」
開け放された窓から雑巾が飛んできて、ラリマーの後頭部にべしゃりと当たった。